陶器と磁器はどちらも陶磁器の一種ですが、原料や製造方法、熱伝導率などいくつか違いがあります。これから買取を検討する方は、陶器と磁器の違いを正しく理解しておくことが重要です。今回は、陶器と磁器の特徴や歴史、見分け方をわかりやすく解説します。
【目次】
陶器とは
陶器の特徴
陶器の歴史
磁器とは
磁器の特徴
磁器の歴史
陶器と磁器の4つの違い
1.使用する材料
2.製造方法・焼成温度
3.熱の伝導率
4.取り扱い方
陶器と磁器の見分け方4つ
1.触感・質感
2.色や厚さなど外観
3.吸水性
4.透光性
高い価値を持つ陶器・磁器の4つの特徴
1.有名な作家の作品である
2.特定の技法で作られている
3.古い年代に作られている
4.きれいな状態で保存されている
陶器や磁器の買い取りなら永寿堂にお任せ下さい
まとめ
陶器とは
陶器は、主原料に陶土(とうど)を用いた焼き物です。陶土を使用することから、「土物(つちもの)」とも呼ばれています。焼き上がった陶器は、土の色味が出て全体に厚みがあるのが特徴です。陶器の代表的なものには、益子焼や瀬戸焼、小鹿田焼などが挙げられます。
陶器の特徴や歴史を詳しく確認していきましょう。
陶器の特徴
陶器の特徴には、次のようなものが挙げられます。
-
焼成温度は、1,200~1,300度
-
耐熱性に優れ、高温に耐えられる
-
熱伝導率が低く、熱い飲み物を入れるのに適している
-
衝撃に弱く、割れやすい傾向がある
-
原料は、鉄分やガラス質が少ない
-
素地が荒く、吸収性が高い
陶器は素地が荒くて吸収性が高い特徴がありますが、水を通すことはありません。水を通さないのは、陶器の表面に釉薬(うわぐすり)を施すためです。
釉薬は素焼き段階で塗布する薬品のことで、焼くと表面がガラス質に仕上がります。釉薬により、仕上がりにツヤ感が出たり、水の浸透を防いだりすることが可能です。
陶器の歴史
日本でもっとも古い焼き物は、青森で作られた縄文土器といわれています。7世紀には唐から釉薬の技術が伝わり、平安末期から鎌倉時代にかけて陶器の生産が始まりました。
室町時代から安土桃山時代にかけ、茶の湯の流行とともに独自の焼き物文化が花開いています。この時期に多くの茶陶器の名品が作られ、現在まで受け継がれてきました。
磁器とは
磁器は、主原料に陶石(とうせき)を用いた焼き物です。陶石を砕いて粉末化した石粉を使用するため、「石物(いしもの)」とも呼ばれています。素地は白色で、その白さを生かして鮮やかな色絵が施されるのが特徴です。代表的な磁器には、伊万里焼や砥部焼などが挙げられます。
磁器の特徴や歴史を詳しく確認していきましょう。
磁器の特徴
磁器の特徴には、次のようなものが挙げられます。
-
焼成温度は、1,300度以上である
-
白色粘土にはガラス成分が多く含まれる
-
硬く透明感のある質感である
-
耐熱性が高く、高温に耐えられる
-
熱伝導率が高く、熱しやすく冷めやすい
-
耐久性に優れ、普段使いに適している
磁器には、陶石以外にもガラス質の長石を加えた白色粘土が用いられます。ガラス成分を多く含み、指で軽く弾くと「チン」と高い音がするのが特徴です。
磁器の歴史
磁器が日本で使われ始めたのは、江戸時代です。朝鮮から来た陶磁器を作る李参平(りさんぺい)が、佐賀県有田で陶石を発見しました。その陶石を使用して伊万里を作ったのが、磁器の始まりです。磁器の登場により、色絵磁器(いろえじき)が創始されています。
色絵磁器とは、磁器の表面に赤・黄・緑・紫等の色絵具で文様を表現する技法です。色彩豊かな磁器が増え、日本各地に磁器生産が普及していきます。
陶器と磁器の4つの違い
陶器と磁器には、次のような違いがあります。
-
使用する材料
-
製造方法・焼成温度
-
熱の伝導率
-
取り扱い方
それぞれの違いについて詳しく解説します。
1.使用する材料
陶器と磁器はどちらも粘土を使いますが、色が異なります。陶器で使われる粘土は「陶土」で、有色のものが多いです。たとえば、佐賀県や長崎県で作られる唐津焼の粘土は、赤土や褐色をしています。茶陶として有名な萩焼の主原料である大道土(だいどうつち)は、ベージュや黄土色です。
一方、磁器は細かく砕いた陶石に、水を混ぜて粘土状にしたものを使います。有機物をほとんど含まない、ほぼ純白のものが多いです。素地については、磁器より陶器のほうが柔らかい仕上がりで、多孔性があります。磁器は焼きが硬く、気孔が少ないのが特徴です。
そのほかに見られる違いは、以下のとおりです。
陶器 |
磁器 |
|
厚み |
厚みがあり、落とすと割れやすい |
薄くて硬い |
吸水性 |
10%程度 |
ほぼ0% |
透明度 |
なし |
あり |
表面 |
ざらざらしている |
つるつるしている |
音 |
鈍く低い音 |
澄んだ高い音 |
2.製造方法・焼成温度
陶磁器の製法は、以下の5つの工程に分かれます。
-
原料の準備
-
土練り
-
成形
-
焼成
-
窯開き
これらの工程のなかで、「原料の準備」と「焼成」に違いが見られます。陶器と磁器における原料の準備の違いから確認していきましょう。
陶器 |
磁器 |
|
|
焼成については、次のような違いがあります。
陶器 |
磁器 |
1,200~1,300度 |
1,300度以上 |
陶器と磁器のどちらも釉薬を塗布してから焼きますが、高温で焼く磁器のほうが硬く焼き固まり、吸水性が少なくなるといった特徴があります。
3.熱の伝導率
陶器と磁器は熱の伝導率が異なります。陶器は熱伝導率が低く、磁器は伝導率が高いです。陶器の熱伝導率が低くなるのは、素地のなかに目に見えないほどの細かい孔や隙間が存在するためです。孔や隙間に閉じ込められた空気が断熱材の働きをするため、熱が伝わりにくくなります。
ガラス質が多い磁器は、素地の中に空気の入り込む余地がほぼありません。断熱材となる空気がないため、熱が伝わりやすくなります。磁器製の湯のみは熱が伝わりやすいため、熱い液体を入れた直後に手で持つと「熱い!」と感じるでしょう。一方、陶器はゆっくりと熱が伝わり、飲み終わる頃まで程よい熱を保つため扱いやすいです。
4.取り扱い方
陶器と磁器では取り扱い方が異なります。たとえば、陶器は磁器と比べると柔らかいです。複数の陶磁器を重ねて収納しようとすると、陶器には傷が入る可能性が高くなります。また、陶器は素地が小さな穴が空いた状態で吸水性が高いため、汚れやすいです。
一方、磁器は緻密でほとんど吸水性がないため、汚れを吸収しづらい傾向があります。料理の水分や油の染み込みが気になる方は、購入後「目止め」と呼ばれる作業をおこないましょう。手間はかかりますが、器に水分や油分が染み込むのを防いで、きれいな状態を保てます。
目止めの手順は、以下のとおりです。
-
お米のとぎ汁を用意する
-
とぎ汁に器を付ける
-
15~20分ほど沸騰させる
お米のとぎ汁に付けると表面をコーティングできます。ただし、火加減が強すぎると器の一部だけが高温となり、ひび割れが生じる場合があるため注意しましょう。
陶器と磁器の見分け方4つ
陶器と磁器を見分ける方法には、次のようなものが挙げられます。
-
触感・質感
-
色や厚さなど外観
-
吸水性
-
透光性
それぞれの見分け方について詳しく解説します。
1.触感・質感
陶器と磁器は、触感や質感で見分けられます。陶磁器に触れてみて、ざらざらとした感触があるものは陶器です。しっとりして滑らかな質感のものは、磁器と判断できます。器に触れられるのであれば、触感で陶器と磁器を見分けてみましょう。
また、器の見た目からも陶器か磁器かを判別できる場合があります。たとえば、器に厚みがあり、ナチュラルな印象を受けるものは陶器である可能性が高いです。一方、薄くてつるつるとした見た目で、温度感のない無機質な印象を受けるものは磁器の可能性があります。
2.色や厚さなど外観
陶器と磁器は、見た目の色や厚さで判別できます。陶土と呼ばれる粘土を使用する陶器は、ベージュや黄土色など有色のものが多いです。細かく砕いた陶石に水を混ぜて粘土状にしたもので作る磁器は、ほぼ純白で全体的に澄んだ色をしています。
また、陶器と磁器は硬度が違うため、食器の厚みに違いが出ます。厚手のものが陶器、薄手のものが磁器です。さらに、陶器と磁器では厚さが異なるため、叩いたときに出る音が異なります。低温であれば陶器、高く澄んだ音が出れば磁器である可能性が高いです。
ただし、器の大きさによって音に違いが出るため、音だけで正確に見分けられるわけではありません。触感や質感、吸水性などほかの項目と合わせて、陶器と磁器を見分けましょう。
3.吸水性
陶器と磁器は、吸水性でも判別できます。陶器と磁器で吸水性が異なるのは、両者で原材料が異なるためです。陶器は陶土と呼ばれる粘土から、磁器は陶石から作られています。陶土で作られる陶器は水を吸い込む性質があり、吸水性が高いのが特徴です。
ただし、きちんと水を拭きとらないと汚れが溜まります。磁器の原材料となる陶石は、水を吸い込む性質がありません。吸水性が低いため、ごみやほこりが吸着せず比較的お手入れが簡単です。両者の見分け方は、器に直接水を垂らして弾くかどうかを確認する方法があります。
4.透光性
陶器と磁器は、透光性でも判別することが可能です。陶土で作られる陶器は、光を通さない性質があり、光をかざしても透けて見えることはありません。一方、薄手の磁器には透光性があり、光にかざすと若干透けて見えることがあります。
陶器と磁器を見分けたいとき、部屋の明かりに透かすと判別できるかもしれません。音や色、吸水性で判断できない場合は、透光性で見分けてみましょう。
高い価値を持つ陶器・磁器の4つの特徴
高い価値を持つ陶器や磁器の特徴には、次のようなものが挙げられます。
-
有名な作家の作品である
-
特定の技法で作られている
-
古い年代に作られている
-
きれいな状態で保存されている
それぞれの特徴について詳しく解説します。
1.有名な作家の作品である
高い価値を持つ陶器や磁器は、有名な作家の作品です。高額査定の可能性がある有名な作家には、次のようなものが挙げられます。
-
加藤 卓男 (かとう たくお)
-
板谷 波山 (いたや はざん)
-
北大路 魯山人 (きたおおじ ろさんじん)
-
加藤 土師萌 (かとう はじめ)
-
金重 陶陽 (かねしげ とうよう)
-
富本 憲吉(とみもと けんきち)
ここで挙げた作家はあくまで一例であるため、ほかにも高額査定になる場合があります。また、有名な作家の作品であることに加え、希少価値の高さで査定価格が変わることも多いです。
2.特定の技法で作られている
特定の技法で作られた陶器や磁器は、高額査定を受ける可能性が高いです。
たとえば、「赤津焼」や「瀬戸染付焼」などが挙げられます。赤津焼は、安土・桃山時代に茶道の発展の影響を受けて確立された技法です。7種類の釉薬と12種類の装飾技法を駆使し、茶道具から家庭用品まで幅広く焼かれています。
瀬戸染付焼は、素焼きしたあとに白地の素地に絵付をおこなうものです。藍色を基調とした色彩で鳥や花などを筆で描くため、潤いのある作品に仕上がります。質が高く美しい赤津焼や瀬戸染付焼は、価値が高いと評価されるため査定価格が高いです。
3.古い年代に作られている
年代が古い作品は、高額査定を受ける可能性が高いです。たとえば、「古瀬戸」や「カセ古瀬戸」が高い価値を持ちます。古瀬戸は、中国や朝鮮の陶磁器や金属器などをモデルに作られた陶器の総称です。中世において、唯一釉薬が使用されています。
カセ古瀬戸の「カセ」とは、釉薬の表面に入った細かいひび割れから染みこんだ水分や、温度差で発生する膨張や収縮で起こる剥離のことです。一見すると価値が低く見られがちですが、古瀬戸の特徴のひとつで高く評価されるため、高額査定を受けやすくなります。
4.きれいな状態で保存されている
高い価値を持つ陶器や磁器は、ひびや欠けなどなく、きれいな状態で保存されています。とくに、陶器は磁器と比べると柔らかく、お手入れ時にひびや欠けが発生することも多いです。
また、陶器は水分を吸収しやすいため、湿度の高い場所に放置するとカビが生えるおそれがあります。高額査定を狙うなら、きれいな状態で保存することが大切です。
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骨董品買取り専門店の永寿堂では多種多様な骨董品の買取実績があり、業界トップクラスの高価買取を実現しています。とくに、特定の技法で作られていたり有名作家が手がけていたりする陶器や磁器は、高価格での査定が可能です。買取方法は、店頭買取や出張買取、宅配買取からお選びいただけます。
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まとめ
陶器と磁器はどちらも陶磁器の一種ですが、原材料や製造方法、熱伝導率などが異なります。両者を見分けるには、触感や外観、吸収性、透光性などの違いから判断することが可能です。しかし、自宅にある陶器と磁器に価値があるのか判断に迷うこともあるでしょう。
有名な作家の作品や特定の技法で作られた陶器と磁器は、高額査定になる可能性があります。買取を検討する陶器や磁器をお持ちの方は、鑑定士の査定を受けてみてはいかがでしょうか。
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